勇者様との出会いと、ある出来事

3/13
前へ
/30ページ
次へ
「ここが私達の家だよ! ちょっと待ってね、今パパを呼んでくるから。」  勇者様を連れて、私達は自分の家に帰って来た。途中ですれ違う人達の驚き顔、何だか誇らしい気持ちになった。 「アタシが行くー!」 「あ、こらミーナ!」  中に居るはずのパパを呼ぼうとすると、ミーナが先に家の中へと飛び込んだ。それを見た勇者様は、何が可笑しいのかクスリと笑う。 「はは、そんなに焦らなくたっていいのに。」  そんな笑顔も、私の胸を高鳴らせるには充分だった。見上げるような高さの勇者様は、太陽を背にクスクスと笑い続ける。 「おお、これはこれは勇者殿、水の街ウィーダにようこそ。私が町長のトム・マードックだ。」 「はじめまして、俺は魔王を倒す旅をしているアレク。よろしく。」  パパと勇者様は、互いに手を差し出すとガッチリと握手を交わした。握手をするときにマントの奥が、少しだけ覗く。  がっしりとした体と、体にピッタリとした黒の服。それと、小さな鉄の輪っかみたいな物が、沢山ジャラジャラとくっついているのが一瞬だけ目に入る。  そんな私の視線に気付いた勇者様は、「気になるかい?」と言ってマントを広げてくれた。 「うわぁ……」 「はわぁ……」  そこには、沢山の道具が勇者様の体に付けられていた。  小さな瓶がポケットから覗き、魔法草で編まれた紐。ジャラジャラ付けられていたのは、綺麗な宝石であしらわれた腕輪だった。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加