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「それで、町長さんにお願いなんだけど……俺を一晩、この街に泊めて貰ってもいいかな?」
広げていたマントを改めて体に纏うと、勇者様はパパに向かってそうお願いする。よく見ると、勇者様の顔は少しだけ疲れているような……そんな雰囲気が感じられた。
そりゃあそうだよね。外の世界に住んでいる恐ろしい悪魔や魔物と、勇者様は一人で戦って旅をしているんだもの。きっとすっごく疲れているんだろうな。
「ねえパパ、勇者様を家に泊めてあげて! ね? お願い!」
「パパお願いー!」
パパに向き直ってお願いすると、ミーナも私に続いてくれた。そんな私達を見たパパは、フッと笑うと頭にポンと手を乗せる。
「誰も断ったりしないさ。勿論、勇者殿は家に泊めさせるつもりだよ。」
「本当!? やったぁ、パパ大好き!」
「やったー!」
パパの優しい言葉に、私は思わずパパに抱き付いた。だって、嬉しかったんだもの。
「二人共、ありがとうな。」
勇者様も、笑ってくれる。それだけで、私の心は一杯になった。一晩だけだけど、勇者様と一緒にいられる……
そんな気持ちで心が満たされるのが感じられた。
「では勇者殿、中へどうぞ。」
「どうぞー。」
パパが中に入るのに続いて、ミーナも中に入る。しかし、その時勇者様が中に入ろうとしなかったのに、私は気付いた。
「……どうしたのですか?」
「ちょっと嫌な予感が……な。いや、何でもない。じゃあ中に入ろうか。」
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