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「誰か! 誰か助けてくれぇぇ!!」
耳をつんざくような、恐怖と畏怖が混ざり合った悲鳴。思わず耳を覆いたくなるような、ゾッとする絶叫。
「ちょっと窓を開くぞ!」
混乱する私達とは別で、勇者様の行動は速かった。部屋の窓をバタンと大きく開くと、勢い良く窓を一跳びで乗り越えた。
「ゆ、勇者様!?」
慌てて私は、窓へと駆け寄り外を覗く。私達の部屋は二階……にも関わらず、勇者様は身軽に着地して走り出していた。
騒がしい。街が、騒がしい。
シンと静まり返っていた街に、いつの間にか悲鳴が溢れている。男の人も、女の人も、何人もの慟哭のような絶叫が街に響き渡っていた。
「ミーナは此処に居て! 私、勇者様を見てくる!!」
「お、お姉ちゃん!?」
胸騒ぎなんて生易しいものじゃない。跳ねるような心臓と、締め付けるような恐怖。
そんな縛鎖から逃れるように、私は勇者様を追いかけ走る。走る走る。
扉を開き、階段を転げ、靴も履かずに外へ飛び出す。そこには、地獄のような光景が広がっていた。
人の形をした魔物。そして、魔物の腕から滴り落ちる紅色の液体。
血。月の光に照らされて、鈍く赤黒く光るそれは、血。ぽたりぽたりと一滴ずつ、地面を赤に濡らすそれは……血。
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