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「あ……あぁ……」
魔物の腕から滴り落ちる血……その先には、赤黒い塊が転がっていた。欠片のような、塊のような、そんな塊。
見たくない。けど見えた
考えたくない。けど考えた。
知りたくない。けど……私は分かってしまった。その塊には、千切れた布や、汚れた靴、それに……べちゃりと濡れた髪の毛。
人だ。いや、人だった。
「リース、危ない!!」
「……ぇ。」
受け入れられない現実の中、勇者様の鬼気迫る声が聞こえた。我に帰った私の視界には、こちらに顔を向けた魔物の姿。
おぞましく、猛々しい。目が離せなくなるその姿が、スローモーションで私へと迫る。
体を屈め、地を蹴り、濡れた腕を大きく振り上げる。みるみるうちに近付く魔物に、私の口からは無意識に絶叫がほとばしった。
「いやぁぁぁぁぁっ!!」
ザシュッと生々しい音が聞こえた。振り上げた腕を私に叩き付けようとしていた魔物が、真っ二つに割れた。
「……間に合ったか。」
魔物の奥から現れたのは、大きな両刃の剣を構えた、勇者様だった。
湿った音を立て、二つになった魔物が崩れ落ちる。ドロリとした体液が、私と勇者様の体に跳ねる。
その瞬間、私の腰が……ストンと抜けた。
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