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「リース、ここは危ない!! 早く逃げろ!!」
切羽詰まった表情で勇者様がそう叫ぶけど、腰が抜けた私はフルフルと首を横に振るしか出来ない。
力を入れてみても、私の下半身はうんともすんとも言ってくれない。全く……動かない。
その時、勇者様の後ろで影が揺らめいた。
「勇者様、後ろっ!!」
「……!!」
振り下ろされた腕を、勇者様の大剣が受け止める。鈍い、耳障りな不協和音。
力でねじ伏せようとする魔物の腹に、勇者様の蹴りが入る。そして、剣の柄の一撃。
勇者様の反撃に、魔物はたまらず飛び退いた。勇者様のが、ぜいと荒い息を吐く。
「ククク、流石勇者ト言ウベキカ……」
「しゃべった……!?」
禍々しくも、人型。しゃべれたとしてもおかしくないんだろうけど……
鉄をすり合わせたようなその声で、魔物はしゃべる。
「確カニ貴様ハ強イ。ガ、一人デハ限界ガアロウ。ソンナ貴様ニ、取引ヲシテヤロウ。」
「取引だと……?」
いつの間にか、暴れまわっていた魔物達が、取引を持ちかけてきた魔物の周りに集まってきた。
一、ニ、三……全部で六匹。いや、勇者様が斬り伏せたのを合わせると七匹。
みんなは……みんなは大丈夫なのかな? みんな生きているの?
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