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バスに揺られながら私は自分の生活を思い返していた。
私の生活は何もかもがひどく荒んでいた。
先輩からの叱咤。
仕事の失敗。
知らない土地での独り暮らし。
孤独。
私は毎日そういったものに耐えていた。
バスの揺れが収まり、ブザーの音と共にバスの扉が開いた。
バスから降りた私は、暖かい日差しの中、住宅に囲まれた通りを目的地に向かって一歩踏み出した。
柔らかい風が私の髪の間を通る。
少し歩くと私は羽織っていたカーディガンを脱いでバックの中へとしまった。
『前世療法』
私がこの言葉を詳しく知ったのは3ヶ月ほど前のテレビ番組でのこと。
その時はまさか自分が受けることになろうとは思いもよらなかった。
目的地は外壁がレンガで出来た今時のおしゃれな家。
花が飾られた階段を上がった先に玄関扉があり、その前で私はゆっくりと深呼吸をした。
とうとう来てしまった。
自分に対する失望と期待を胸に私はチャイムを押した。
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