あいつはやってきた

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 その言葉に俺は口元を押さえながら、 「止めろ、あいつの話はするな。気分が悪くなる。というより、腹が立つ。」 「はっはっは。剣斗は藤堂が嫌いだったもんなぁ。」 「嫌いっていうか……苦手なんだよ。何考えてんのかよく分かんねーし。」 「そうか?まあ、藤堂の奴には俺も剣斗も苦戦させられたもんな。」  藤堂愛姫(トウドウ アイヒ)とは中学時代、俺と盾で結成した不良集団『グングニール』で地域一帯の不良集団を壊滅させていた時、同時期に結成されてグングニール同様に破竹の勢いで不良集団の殲滅をしていた『フェンリル』の筆頭。 女の身でありながらメリケンサックを扱い、その金髪から『金獅子』と恐れられた少女。 当時『斬鉄剣』と呼ばれていた俺は『グングニール』のリーダーとして幾度となく藤堂と戦った。  そんな関係だ。  まあ、そんなワケで俺は藤堂に似ている特徴を持った転入生の登場にイマイチ乗れない。  もし本当に彼女が来た場合、せっかく高校入学から盾と必死になって真人間になるべく費やした数ヶ月が一瞬で不意になってしまう。  そんな事を盾と喋りながら考えていると、担任が入ってきた。 「よし、じゃあLHRを始める。 挨拶はメンドいからナシ。 さっさとお楽しみの転入生紹介だ。  そんなワケで、入りなさい。」  担任のいい加減な言葉がかかり、一瞬間をおいてドアがあいた。
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