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結菜は命に別状はなかったが、失明してしまった。
顔も何針か縫ったが、時間が経てば顔はもとに戻ると言われた。
僕が病室に入ろうとすると、病室の中から自分の両親と結菜の両親の話声が聞こえた。
あまりよく聞き取れなかったが、この件は事故ということで収めて欲しいということと、僕が別れること、そしていくらかのお金を渡したようだ。
僕から離れたほうが、結菜は幸せかもしれないと思った。病室から4人が出てきた。結菜の両親は僕に
「最後に話してあげて」
そう言った。僕は静かにそれに従った。
「圭君?」
僕が結菜のベッドの隣に腰かけると結菜が口を開いた。
「あぁ……。結菜…すまなかった。そんな言葉だけでは、許されないくらいに…君を傷つけた……」
「いいの…圭君が無事ならいいの。………別れたくない」
知ってるのだろう…僕の両親が出した条件を…。
僕は俯いて
「結菜と出会ってから初めてがたくさんだった。
白が色であるとか、雪が花のようだとかっていうのは、僕1人では気付かなかったことだ。楽しかったし、まるで子供のころの穴を埋めるように幸せをたくさん感じた。結菜のお陰だよ……だから、幸せになってほしい…こんな僕に幸せを見せてくれた君には…これでもかってほどに笑っていてほしい…」
「圭…君?」
「誰よりも……愛しているよ。いつまでも…愛し続けるよ。だからどうか、幸せになって」
そう言うと、僕は結菜の唇に口付け病室を後にした。
結菜は泣いて僕を呼び続けていたと、兄達から聞いた。それを聞いて、僕は声を上げて泣いた。
それもまた初めてのことだった。
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