5人が本棚に入れています
本棚に追加
いつもよりも一段と寒いと感じ、僕はふと空を見上げた。寒いのは当たり前なのだろう。
空からは、ハラハラとゆっくり真っ白な花びらが舞ってきていた。
「雪……」
僕は静かに呟いた。
またこの季節がやってきたのだ。銀色の世界に染まる季節が……
僕はそう思うと、しばらく空を見上げたままでいた。見上げていないと、僕はまた君を探してしまうから。銀色の世界で赤く染まった君を思い出して涙を流してしまうから。
君を忘れたいのに
忘れたくない
君を想いたくないのに
死ぬまで君を想っていたい自分に矛盾があることはわかってる。だけど、君がいないこの世界を無意味だと思えないのは、君が好きだと言っていた『雪』が君が綺麗だと笑っていた『雪』があるから。
「冬の桜だね?」
「桜?冬には桜なんて咲かないよ?」
「わかってる!!でもさ…雪は空から舞ってくるのよ?まるで、春に桜が舞うようにさ。とっても綺麗でしょう?」
風流とか感じたことのない僕は君を笑ったけど、今わかるよ
「雪花のようだ……」
呟くと僕は再び歩き出す。君の笑顔を頭に、君の詞をこの胸に。
僕も好きになりたい………君が愛した世界……………
最初のコメントを投稿しよう!