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なぜ教えてしまったのか、自身もよくわからないでいたが、僕はこの結菜の笑顔に弱いようだ。
この頃から、結菜の見方が変わった。今まで多少煩わしいと感じていた存在だったのだが、それが今では愛しいとすら感じてしまう。
「雪……だね?」
「雪?」
またおかしなことを言った結菜を僕はジッと見た。
「雪だよ……。だって、冬でしょう?河津君の誕生月は素敵ね」
僕は首を傾げて結菜を不思議そうに見た。
「誕生月が素敵?」
「そうよ!!だって、雪振る季節だよ?素敵」
「君はまた感情論か?雪なんか、僕の誕生日には降らないだろ?分かり切ったことだ…」
言っててわかった。結菜はそういう事が言いたいわけではないのだ。わかってはいたのだが、僕の考えは改められなかった。それが僕だから。数少ない僕の……個性なのだ。
「感情論かもしれないけど違うよ?私は……白が好きだから。あっ!
やっぱり感情論だね」
クスクスと楽しそうに笑う結菜を見て、不思議と胸が高鳴った。
心境の変化なのだろう。
僕とは相反する考えを持つこの女性を…結菜を
好きになるなんて。
「どうしたの?おかしな顔してるよ?」
結菜にそう声掛けられて、ふと我に戻り首を横に振り
「雪が好きなのか?」
何かと考えて結菜にとって愚問であろう質問をした。
「好きよ……とても綺麗で、まるで桜みたい」
「桜?雪だろうが」
「そうよ……雪よ。でも、空から降るその姿がまるで春に舞う桜の花びらのようにはかないわ」
「桜……か」
僕が優しく笑ったからか、結菜は嬉しそうに笑い僕の手を取り
「わかってくれた?」
「バ―カ」
溢れてしまいそうな僕の結菜への想い。
「結菜…1つわかったよ?」
伝えたい。そう思ったんだ。
「なにを?」
今考えれば、伝えなければよかったのかもしれない。
「どうやら僕は君に惚れているみたいだ」
風が一吹き僕らを優しく包んだ。結菜は目を丸くして驚き、僕を見ると大きく頷き
「私達……お似合いよ?」
自分で言うことではないだろう言葉を吐いた。
「なんでだ?」
「だって、私は感情論で河津君は理屈論で…お互い足りないものを補っているじゃない?」
その考えが好きだった。
結菜のその考えが僕の気持ちを優しく、君に出会うまで気付きもしなかった想いに気付かされる。
僕は結菜に唇を落とした。僕らは、お互いの想いを知りお互いを受け入れた。
『愛してる』
僕らは2人で微笑んだ。
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