プロローグ

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いつの間にか、この貨物列車の中で軍隊言葉は消えている。 婦人会からもらった握り飯をゆっくりと、ほうばった。 故郷へ向かう安堵感とゆとりが、初夏の夜風に乗って私たちをつつんだ。車輪の轟音も心地よい子守唄となり、まどろみはじめる。 一九四六年、五月、一四日の夜のことである。
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