痛み

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心はすぐに早退し、次の日も学校を休んだ。 あんな事は、初めてだった。初めて、霊を怖いと思った…。 怖い程の、怨念。 苦しみと痛みと憎しみの果て。少女はそこに辿り着いてしまったのだろう。 しかし恐怖と裏腹に、心は少女の本当の姿を見た。 少女は、 少女は、泣いていた。 ほんのわずか見せた、涙。あれが、少女の本当の姿なのではないか…?本当は、怨みとか憎しみとかより、悲しくて仕方がないのではないだろうか……。 真実は、わからない。 母親はすぐに心の所に来て、必死に慰めた。 心も頭では分かっているものの、その時は恐怖と悲しみで母親にきつく当たってしまった。 それから、母親は姿を見せない。 あの日から、4日後、心は不安になり、母親を呼んだ。 「…お母さん?」 返答はない。 「…お母さん…」 泣きそうな声で、母親を呼び続けた。 その時。 《……心…》 優しげな、悲しげな、母親の声。 心は嬉しくて泣き笑いになる。 「もう、来てくれないかと思った…」 泣き出す心を母親は優しく慰め、重い口を開く。 《…世の中には、いい霊ばかりだとは限らないの。怨霊も、たくさんいるのよ……》 ゆっくりと、言葉をつむぐ。 《あの霊は、特に怨念が凄かったわ。お母さんが行かなかったら、心、どうなっていたか…》 優しく叱る母の言葉を、心は黙って聞く。 《お願い、心。もう二度と危険な目には遭わないで……》 見ると母親が泣きそうになっていた。心は「…ごめんなさい」と素直に謝る。 「…でも」 心は母親を見る。 「でも、あの人、泣いてたの…」 母親は驚いて心を見た。 「悲しいって、泣いてたの…」 心は俯き、訴える。 「私にこの力がある限り、多分霊に関わらないのは、無理だと思う…」 空気が、振動する。 「だから…ごめんなさい…」 頭を下げて謝る心を、母親はただ見つめた。 しばらくして、母親は息を吐く。 《…仕方がないのね》 寂しそうに、心の頭を撫でる。その手は、何も掴まない。優しい故、掴めない。 《でも、気を付けるのよ?》 「うん…」 それを聞くと、母親は安心したように頷き宙に浮いた。 《今日は、行くね》 そう言い残し、姿を消す。 心は、涙を拭った。 悲しくて痛い涙は、もう流さないようにと……。
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