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母親は戸惑いを隠せずに、黙って心を見守る。 …何があったか知らないなんて、口が裂けても言えなかった。 自分は、知っている。誰よりも事実を、知っている。 ベットに寄り掛かり膝を抱える心を、母親は黙って見つめた。 沈黙。 部屋を包む嫌な空気。 しかし、先に口を開いたのは心だった。 「……わかってるの…」 小さな声で、しかしはっきりと。 「死んじゃった人は、この世にいちゃいけないって、わかってる…」 母親は黙って話を聞く。 「…でも」心は唇を噛んで、悲しそうに言った。 「…でも、私にとったら霊は大事な友達なの…」 赤く腫れた目は、どのくらい泣いたのかを物語っている。 「なんで、私の友達ばっかり、いなくなるの…?」 その言葉に、母親は思わず胸を痛める。黙って、俯く。 「…友達なんて、私にはいない……」 心は顔を膝に埋めた。 「昔から、霊しかいないの…」 悲しい過去。 霊感が強い故に、孤独と常に隣り合わせだった自分。傍にいてくれたのは、いつも、優しい霊達。 霊がいなかったら、今の自分もいない。 心は独りが、怖かった。 「…なんで…?」 どこか知らない場所へ、ひとりぼっちで連れて行かれたような、孤独感。 知らぬ間に、霊が大切な存在になっていた。 心の目からは、涙が光る。 悲しくて、苦しくて、切ない涙が。 母親は、俯く。 自分のせいで、心が悲しんでいるのに、俯く。 …もう、話さなければいけないのかもしれない………。
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