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「ねぇ…」
ソファーに腰掛ける僕の膝の上に、見上げて来る彼。
「何?」
僕は微笑みながら、返事をする。
わざわざ、問い掛けに問い掛けで答える。
彼は、自分から何かを言い出す事が苦手な子だから…
ちょっと、意地悪。
月明かりの中、見上げてくる表情は、実年齢よりも幼く見える。
「ううん…」
下を向いてしまった。
あらら…
詰まらない。
なら、もう少し意地悪しちゃおうかな?
「ふふ…」
そっと、帽子を取る。
「あっ………!?」
取り返そうと、見上げた彼の頬に、優しくキスをする。
すると、彼は真っ赤になりながら、目を見開いた。
なんて分かりやすい子。
何かを言いたそうに、口をパクパクさせている。
さて、何が言いたいのかな?
分かるけど、敢えて何も言わない。
話題を変える。
「君の黒髪は綺麗だね」
そう、呟きながら髪を撫でる。
此処に居る誰よりも綺麗だよ。
何色にも染まらない黒髪。
それを綺麗と言わず、なんと言えば良い?
「…そんな事、無いよ」
小さく答える彼。
それだと、照れていると、言っているのと同じだよ。
嬉しかったのかい?
思わず、微笑んでしまう。
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