雪国への出張

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 今回のこの仕事を引き受け ている営業部員は、この山本 だった。私と山本はプライベ ートで飲みに出たりすること もちょくちょくあったので、 全くの試作段階である今回の 機械についても、彼は、私か らある程度の情報を得ていた のだ。  そして、偶然にも彼の顧客 の中に、それを欲しがる会社 があったようだ。彼は、立派 にパイプ役を果たし、今回の この取引が成立した。  決して安い機械ではなかっ たから、今回の仕事は彼にと って一世一代の大仕事になる 。 「高杉ちゃん。今日はくれぐ れもよろしく頼むよ。俺この 仕事に賭けてんだからさ」  新幹線の中、隣の席から、 駅の売店で仕入れてきた缶の コーヒーを私に渡しながら山 本が言う。  高杉は、私の名字だ。彼は いつも私の事をちゃん付けで 呼ぶ。
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