雪国への出張

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 卒業以来一度も足を踏み入 れていない母校に近づくこと は、何かほんのりとした郷愁 に似たものがある。母校の傍 は私にとって第二の故郷とい えた。  とにかく、そう強く感じる。  そして、そう感じることは 、私にとって自然な事のよう に思えた。  そもそも、私はその母校の 傍で生まれ育ったと言うのだ 。  三歳頃までをそこで過ごし たと聞かされていた。私の父 親の勤め口がその近所にあっ て、その父親が転勤となり、 私達も引越しをして現在の実 家に納まったらしいのだ。記 憶はないのだけれど、無意識 のうちに、その辺りの土地に 対しての言い知れぬ親近感が 、私の中にあるに違いなかっ た。
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