雪国への出張

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 私の会社では、工作機械を 製造販売していた。特殊な物 を中心に取り扱っている。  レーザー光線を照射して、 それで物を切ったり、光線と 化学反応を利用して物をくっ 付けたりなど、一般の生活と は無縁な物ばかりだ。  今回納品する物もまたそん な特殊な物の一つだ。かなり 大掛かりな装置だった。  試作段階の物なのだが、先 方の会社にどうしてもと請わ れて、強行突破で販売された のだ。  この機械には、私の発案と 設計が盛り込まれていて、う まく行けばそれなりに話題に なるかもしれないと、少し期 待して、ときめいている部分 もあった。  しかし、正直に言えば、そ う言った期待よりも不安の方 が遥かに大きい。  先方の会社の工場でこれを 組み立てるのだが、大型機械 は、輸送のため、一旦小さな パーツに分解されて納品とな る。そして、客先の工場内で 再び組み立てられるのだ。  しかし出来あがった機械は 、正常に動作してくれない。 そんな事はよくある話だった 。  ましてやこれは、プロトタ イプだ。想像を逞しくして、 そんな情況を思い描くと恐く なる。  もちろんそうはならないよ う、手は打ってあるのだが、 あながち的外れな心配でない ことは、経験的に分かってい た。
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