雪国への出張

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 この仕事には、私をはじめ 、他にも二人ほど技術者が同 行させられることになってい た。他に営業部のものが一人 同行する。  納品初日は、クレーン等の 重機を使っての荷物の搬入を したり、その他、重い部品を 積み上げたりと、大掛かりな 組立作業があるため、その作 業員として、社員や外注の業 者を併せてさらに二十名ほど のスタッフが加わる手はずだ 。  私達チームは、事前に何度 も打ち合わせを重ねていた。 それに、今までに何度でもピ ンチはあったが、何時だって なんとか乗り越えてきたのだ 。 「今度だって何とかなるさ」  そう思って、自分を落ち着 ける。  私の出張はしょっちゅうだ った。独身だったし、部署内 では、まだ若造の部類に入る 二十代の後半だったから、機 械の設置で不具合が出ると、 自分の携わった製品であろう となかろうと、かまわずに、 「とりあえずお前が行って来 い」  と、派遣される事が多かっ た。  出張の期間は、ばらばらだ ったが、ほとんどの場合は二 、三日で帰ってこられる。  しかし、今回は、実績の無 い、プロトタイプを納品した 為、ひょっとすると二週間ほ ども帰ってこられないかもし れない。悪戦苦闘の末、出張 が長引くことも大いにありえ た。  いつもより少し多めに、身 の回りのものを詰め込んだた め、旅行鞄もいつもより一回 り大きく見える。  七時には、自宅を出なけれ ばならず、スープをすすりな がら、こめかみを包むように押さえていた左手をはずす。  体調が戻り始めた手応えを感じて、私は安堵のため息をつくのだった。
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