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「皆とお別れだよな…」
それを側にいた利守は聞き逃さなかった。
「良兄…」
「ん、利守君。どうしたの?」
(やっぱ弟とは言え、呼び捨てはまだ出来ない…)
そう思いながら聞く。
「良兄は、施設の人達と別れるの…嫌?」
利守はそう不安そうに聞いた。
「…嫌ではない。でも寂しいんだ。だけど。」
良守はそこで話を切って利守を真っ直ぐ見る。
「だけど…?」
「きっと俺は墨村の皆と暮らしたいって望んで、約束みたいのしたんだろ?」
「ぅ…うん。」
「約束は守るから。俺にはちゃんと帰る場所があるんだからな。」
良守はそう言うと利守に笑顔を向ける。
「僕、ずっと待ってたんだ。良兄が家に帰ってくるの…」
利守は流れ出た涙を拭いながら言う。
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