私は

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ひらひらと白い桜が舞い踊る 「寒いと思ったら、雪が降ってたのね」 そう言ってご主人様は、微笑んだ 「風邪をひいてしまいます。屋敷にもどりましょう」 私が言った ご主人様が風邪をひいたら、大変です 私はご主人様にいつも元気に笑っていてほしいのです 「もう少しだけ……もう少しだけ見ていたいわ……いいでしょう?キセナ」 そう言ってご主人様は、微笑んだ顔を私にむけた 「分かりました。満足したら申しつけください」 「分かったわ」 そこで私とご主人様の会話は終了 ご主人様はひたすら雪を眺めている 白い肌 ハチミツ色に輝く髪 ふとした瞬間、壊れてしまうそうな細い身体 髪と同じハチミツ色の綺麗な右目 そして、 まるで全てを見透かすような青く澄んだ左目 左目以外、あの人と同じ 雪はやまない 雪が嫌いなのではない 雪が一面降り積もりできる銀世界は、神秘的 ご主人様にも白く美しい雪はよくお似合いだ しかし私は、この季節が嫌いなのだろう あの日のことを思い出してしまう あの日のことを
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