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よし、と少し意気込んで、次の一戦を申し込む。勝てないけどね。
「……ねぇ」
「……なに」
少し無言。そうなってようやく、タカが弱ってることに気付く。やっぱりこんな俺、彼氏にするのはやめておいた方がいいよタカ。映画によくある親友からのアドバイス。
「……学校で避けないでくれよなー」
声の震えを抑えるために、なるべく無機質にはなったであろうその言葉が、耳に痛かったから。俺は
「阿呆か」
と言って、もしかしたら初めて頭を撫でてやったのかもしれない。阿修羅のごとき動く指を、ぴたりと止めて、俺ににんまり笑顔を向ける。そして画面に目を戻した。あぁ、気付かないうちにゲームオーバー。
「撫で損だな」
「撫でた分は指とめたし」
「んじゃ、次は勝ちを譲れ」
「付き合うならのーぅ」
「だから勝ちを譲れ。三日だけ試用期間だ」
タカの指が止まって、コントローラーをおく。
「阿保か。嘘だ」
「ですよねー」
良くわからないけれど、こいつと離れたいとは思わなかった。そうしなければならないと言うのなら、やつの薬指に俺がリングを買ってやったことだろう。そうしなければならないと、言うのなら。
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