6/6
前へ
/9ページ
次へ
よし、と少し意気込んで、次の一戦を申し込む。勝てないけどね。 「……ねぇ」 「……なに」 少し無言。そうなってようやく、タカが弱ってることに気付く。やっぱりこんな俺、彼氏にするのはやめておいた方がいいよタカ。映画によくある親友からのアドバイス。 「……学校で避けないでくれよなー」 声の震えを抑えるために、なるべく無機質にはなったであろうその言葉が、耳に痛かったから。俺は 「阿呆か」 と言って、もしかしたら初めて頭を撫でてやったのかもしれない。阿修羅のごとき動く指を、ぴたりと止めて、俺ににんまり笑顔を向ける。そして画面に目を戻した。あぁ、気付かないうちにゲームオーバー。 「撫で損だな」 「撫でた分は指とめたし」 「んじゃ、次は勝ちを譲れ」 「付き合うならのーぅ」 「だから勝ちを譲れ。三日だけ試用期間だ」 タカの指が止まって、コントローラーをおく。 「阿保か。嘘だ」 「ですよねー」 良くわからないけれど、こいつと離れたいとは思わなかった。そうしなければならないと言うのなら、やつの薬指に俺がリングを買ってやったことだろう。そうしなければならないと、言うのなら。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加