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次の日もタカは学校でにへらへらしていた。次の日も、というのは、普段からタカはヘラヘラしているということの裏返しで、雲を掴むってのはまさにこういう奴のことかもしれない。雲を掴む話をタカにしてやったら、
「じゃあ、シュン君は月だね。俺にはまだ届かない」
とか言ってた。いちいちにやけて言うから、どんな反応すれば良いのかわからない、参ってしまう。ちっさい混乱に陥っていると、今度は月について話し出しやがった。
「まあ、月か太陽かで言えば月だよね。太陽は明るい中、明るく照ってるけど、月は暗い中明るく照ってるじゃない。アレ、いいよね」
なにが、と聞き返したい。
そんなわけで、俺の心配は杞憂に終わり、少し安心したわけだけれど、しかし、今度は別のことに気づいてしまったのだ。
そういう目でしか見れなくなっている!
そういうってのは、その、要するにゲイとかホモとかってことで、頭にいつもそのことがある。タカが気持ち悪いとかいう意味ではなくて、周りの目が気になるということ。ここで隣に座ったら、肩を組んだら、とびついたら、変かなやめとこうって思考回路が組み上がっていて、まるで俺がタカと両思いみたいな……。
「ちっが……うよなぁ?」
「知らないけど、多分違うんじゃない」
思わずタカに聞いて、普通に返された俺カッコ悪い。
「で、なにが」
椅子に座る俺の背中に、のしかかりながらタカが聞く。俺は不埒なことを考えながら返した。
「学校では話せないこと」
この距離なら、キスが出来る。その時の俺は、雲に唇の届く月だったに違いない。
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