黄金の王女

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淡黄色のドレスが玉座に上がる。結い上げられた髪からは、細い首が覗く。真紅の絨毯に、リンは美しく佇んでいた。 「太陽と月、どちらがより美しく輝くか?」 いつも、比べられていた。 いつも、競わされていた。 そんな生活に嫌気が差して、自ら継承権を捨ててしまった。 リンが笑っていてさえくれれば。 それが、唯一の願いだから。 「私は未だ若輩で、皆さんにご迷惑かけるかと思います」 一番高い場所から、リンの宣誓が響く。広間には、家臣や貴族がひしめき合っていた。口許を扇子で覆い、囁きあっているようだ。 「亡き王の遺志を継ぎ、更に黄の国を良いものにしていきたいと思います」 燭台の中、ドレスが仄かに光る。シンプルなデザインだけに、少女特有の華奢さが際立つ。 『…本当に大丈夫かしら?』 『最近、赤の村では疫病が流行っているみたいだし…』 『将来は王妃以上の美人には、なりそうだけどね…』 『まだ、14歳だからね…』 右の拳を押さえ、レンはリンを見上げた。 細い肩には赤いマント。胸元には、幾多の勲章。頭には、色とりどりの宝石が埋め込まれた王冠。 全ては、自分が彼女に背負わせた十字架。 だから、自分も一緒に枷を填めるから。 大丈夫。 何があっても、リンを独りにはしないから。 「本当に、そなたが国を治められるとお思いか?」 広間の中央から、たどたどしい声が沸いた。一瞬にして、囁きがざわめく。 「今の王女には、王位など重過ぎる」 よくよく見ると。声主の右手はグラスが揺れる。足下もおぼつかない。 レンは急いで、男の元へ駆け寄った。
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