くわいだん

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 朝方、営業車で会社の友人と隣町まで移動していた時の事。運転は僕がしている。    途中、差し掛かった田んぼ道は、友人の地元だった。稲刈りは既に終わっている。道路の両側に広がる田んぼは、土が剥き出しになっている。所々に舗装の跡の付いている道路には、僕達の車しか走っていなかった。    友人は地元の、学生時代の話を懐かしがって話している。そのほとんどは、喧嘩の話だった。    ふと、話の途中で友人が後ろを振り返った。   「どうした?」   「いや、この辺りで有名なヤラレマンが居てさ。同い年なんだけど。ボロボロの服で今、歩いてたから。やられて帰って来たなあれは」    少し冗談めいた口調で友人が言った。僕は運転しながら後ろを振り向いてみたが、既に女の姿は見えなかった。
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