不動明王

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 祖母は独り、戦っていた。左半身が不自由になり、言語も思うままにならない身体になりながら。    ベッドから必死に起き上がろうともがき、看護師にも反抗するその姿は、健康だった頃の厳格な祖母そのままであった。    時折泣きながらも必死に克服しようとする祖母に、僕は不動明王の姿を重ね合わせていた。    昔、祖母が僕に教えてくれた、炎と怒りの象徴、不動明王の姿を。
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