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教卓では女性の先生が紙を片手に喋っている
「連絡事項は以上ね。じゃ委員長、号令お願い」
「はい。起立、礼」
委員長と思われる黒髪の少女がそう号令した後、生徒は各々友達と帰ったり部活の準備をし始める
薫もその内の一人なわけで
薫は鞄を手に持ち、そそくさと教室出ていこうとするが
「かおるぅ~?さ、歯食いしばろっか?」
教室の扉、直前で肩を猫なで声の者に力強く掴まれる
「しつこいな…だが断る!」
「あっこら!待て!」
声の主は勿論、憂なわけだが薫は憂の手を振り解きすぐさま走り出した
「待てっつーの!私の用がまだ終わってない!」
憂は薫の後をすぐに追いかけながら大声で叫ぶ
「そうか残念だな。俺は急用が出来たから帰らせてもらう」
一方、薫は振り返りもせずそう言い終えると走る速度を上げる
「ちょっ!?速っ!?」
薫は速度を保ちながら曲がり角を曲がり、これで逃げ切れたと思われたが
「さらばだっ!?」
「お前!廊下をこんなスピードで走るな!っておぉ紫藤じゃないか」
丁度、反対の曲がり角から来た体格のいい角刈りの男とぶつかった
「げっ…なんで剛多が…」
剛多、この学校で体育教師兼生徒指導長を務める先生だ
その姿は無駄にゴツい体と常に竹刀を持ち歩く、絵に書いたような体育教師である
「毎回お前はその前髪を切れと言っているのに何故切らないんだ!しかも廊下を爆走とはいい度胸だ。ちょっと来い!」
「まじかよっ…だる」
「何か、言ったか?」
襟組を持たれた薫は気怠そうにそう言うが剛多の一言で押し黙る
少し離れた所で憂が自分を指差しながら爆笑しているのを睨みつけながら薫は校舎の奥へと連れて行かれる
「あっはっはっは!薫のばーか!」
廊下に憂の笑い声が響いていた
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