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長谷川はレモンティーを飲もうとするのを止め、俯く
俯く事によって垂れた長い黒髪で彼女の表情は窺えない
しかし、薫は長谷川がどんな様子でもお構いなしと話を続ける
「あとな、俺の事はいつも『紫藤君』ではなく『薫君』と呼んでいたが…急にどうしたんだ?」
「べ、別にいいじゃない…呼び方ぐらい変えても…」
長谷川は顔を俯かせながら答える
薫は隣で俯いている長谷川を横目見ると罰が悪そうに言う
「そうだな。女性を疑うなんて最低だ悪かった」
長谷川はその言葉を聞くと顔をあげ明るい笑顔になった
「もう!女の子を疑うなんてそんな事したら嫌われちゃうよ!?
分かったらちゃんと今の事覚えててね?」
「あぁそうだな。だが…お前にもう一つ謝罪しなければいけない事があるんだ」
「もう一つ…?」
長谷川は笑顔を止め、疑うような顔になり薫の顔を見つめる
「実はな…今俺が言った事は全部、全くの嘘だ」
「え…?」
「長谷川が好きなのはミルクティーでもレモンティーでもない、むしろ紅茶は嫌いなはずだ。俺を呼ぶ時は薫君でも紫藤君でもない、紫藤薫君と呼ぶ」
「そんな……」
「長谷川に聞くが…いや長谷川じゃないな。お前は誰なんだ?何故、長谷川に化けている」
薫は全く顔色を変えず、淡々と述べていき、そして最後に問う
長谷川ではない者に
「フフフッ……感の鋭い男は嫌いだわ」
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