本(ウソ)から出た空想(マコト)

9/11
前へ
/11ページ
次へ
長谷川はレモンティーを飲もうとするのを止め、俯く 俯く事によって垂れた長い黒髪で彼女の表情は窺えない しかし、薫は長谷川がどんな様子でもお構いなしと話を続ける 「あとな、俺の事はいつも『紫藤君』ではなく『薫君』と呼んでいたが…急にどうしたんだ?」 「べ、別にいいじゃない…呼び方ぐらい変えても…」 長谷川は顔を俯かせながら答える 薫は隣で俯いている長谷川を横目見ると罰が悪そうに言う 「そうだな。女性を疑うなんて最低だ悪かった」 長谷川はその言葉を聞くと顔をあげ明るい笑顔になった 「もう!女の子を疑うなんてそんな事したら嫌われちゃうよ!? 分かったらちゃんと今の事覚えててね?」 「あぁそうだな。だが…お前にもう一つ謝罪しなければいけない事があるんだ」 「もう一つ…?」 長谷川は笑顔を止め、疑うような顔になり薫の顔を見つめる 「実はな…今俺が言った事は全部、全くの嘘だ」 「え…?」 「長谷川が好きなのはミルクティーでもレモンティーでもない、むしろ紅茶は嫌いなはずだ。俺を呼ぶ時は薫君でも紫藤君でもない、紫藤薫君と呼ぶ」 「そんな……」 「長谷川に聞くが…いや長谷川じゃないな。お前は誰なんだ?何故、長谷川に化けている」 薫は全く顔色を変えず、淡々と述べていき、そして最後に問う 長谷川ではない者に 「フフフッ……感の鋭い男は嫌いだわ」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加