第二章 二人の薔薇の王

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人の姿だった筈なのに同族の姿となっていたのだ。 「話す気はないのか?」 問いかけるが男は黙り込んだまま。 ヴァルキは溜息をついて男に近付くと手を伸ばす。 びくりとする男を制し、男の頭に手が伸ばされ触れた。 ヴァルキは目を閉じる。 ノイズ混じりに視えるもの ルードゥに嘘を吹き込む姿 誰かに跪く姿 そして城… 「ヴァルキ!!!」 グイッと腕を引かれ我に帰ったヴァルキはキョトンとした。 その腕を引いたのはルードゥ。 「もう、いい…これ以上は視たくない。」 「ルードゥ…」 ヴァルキが視ていたものがそのままルードゥにも視えていたようだ。 ヴァルキは男から離れ、ヘルラージを見た。 それに気付いたヘルラージは茨を動かし男を茨の檻へと閉じ込めてしまう。 どんなに堅い檻よりも頑丈な檻。 男は黙ったままヴァルキを見つめた。 その視線にヴァルキは振り向く。 「黙秘を続けようと無駄だ。 檻の中で大人しく反省してることだな、ベルチェ。」 「ど、どうして俺の名を…」 男は漸く言葉を発した。 ヴァルキはクスッと笑う。 「さぁ、何故かな?」 「…」 男に背を向けて薔薇園を後にした。 .
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