始まりの鐘

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ガラン ゴロン ガラン… 鐘が鳴る。 「…き……さい…」 「起きなさい、レント!」 「ん…ユズナ…?」 此処は、辺境の村、ジブリル。 そこには、小さな教会が一つあった。最早孤児院と化したそこは大人は居なくて、年長のレントと、共に育ったユズナが子供達の面倒をみていた。 「レント!…もう。今日はレントの誕生日でしょう?主役が寝ててどうするのよ。」 「そっか…ごめん、ユズナ。」 そう一言謝ると、もそもそベッドから這い出る。 (そうだ、今日は僕の誕生日だ。) 「じゃあレント、裁きの森に行って、木苺を採ってきてくれない?」 「主役なのに…」 「仕方ないでしょう?裁きの森に入れるのは私達だけなんだから。」 「分かったよ。倉庫の武器借りてくね。」 倉庫には、食料と共に幾つか武器も保存してある。今のように、危険な場所に行く時のみに持ち出す事を決めている。 レントは、出身地も親も知らぬまま育ってきた。 人見知りで、鬱陶しい程前髪を伸ばしたその姿はさながら小動物だった。 「レント兄ちゃ!森に行くの?」 「うん。今日は木苺のパイだって。」 「やったぁ!」 「兄ちゃ、おめでと!」 孤児達への挨拶もそこそこに、悠々と教会を出て森へ向かう。 その日は、いつもと同じで、ちょっと特別な日だった。 .image=304275032.jpg
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