第0章 ある少年の日常

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 そもそも、やんちゃ坊主三人組の中で彼は一番弱い。  痩せ型の体型なのもあって攻撃が重くないし、そもそも戦闘センスがない。  感覚的には、千葉がわざわざ『心眼(サードアイ)』で後出しジャンケンをしなくても、グー(パンチ)しか使わない相手だから勝てるといったところか。  つまり、千葉にとって上野との一対一は何ら恐怖になりえないのだ。(まぁ、三対一でも恐怖していないが。)  上野は思い切り右拳を引き、パンチしますよーと丸分かりの構えをとる。  同時、千葉はキックのために重心を前に移動させた。  互いの一手が交差するーーーー‥ことはなかった。  射程距離(リーチ)の差から千葉に軍配が上がり、上野の腹には見事にキックが入った。  千葉のキックは体重を乗っけて押し出すようなもので、上野は「う゛っ‥!!」と唸って後方に倒される。  「ちょッ!!ふざけんなよテメエ!」  上野は、生駒と千葉の中間に入った。その彼が後方に倒れるならば、当然そこには生駒がいるワケで、生駒から困惑の混じった悲鳴が上がっても仕方がないのかもしれない。  「いてぇ」と下敷きになった生駒から情けない声が漏れた。  千葉はそんなことお構いなしと生駒の太股を蹴った。再び「いてえ!」と声が上がる。  彼はしばらく立ち上がれないだろう。千葉を追うことが出来なくなったワケだ。  残る一人。上野はというと、さっきの蹴りが内臓に響いたのか気分を害したように路上で小さくうずくまっていた。
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