第0章 ある少年の日常

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 ハイ、ケンカは終わり。とでも言うように千葉は「ふぅ‥」浅い溜め息をはいた。  そして、路上に転がる戦闘不可の三人を無視して腕時計を確認する。  「うわっ。もう二七分かよ。」  ‥再び、今度は深い溜め息をついた。  千葉は、どうせ遅刻だしと思って、地べたに座り込む。  そして、疲れたような呆れたような声で三人組に話しかけた。  「結局また遅刻だよちくしょうめ。‥たく。なんなんだよ、オメーらは?律儀に俺の顔を見る度に噛み付いて来やがって。何が狙いだこのやろー。」  足立・生駒・上野は全員が寝転がったままだ。  立ち上がれないのか、立ち上がらないのか‥。千葉には判断出来なかったが、三人から戦意は見受けられなかった。  「あ?分かんねえねか、テメエ?」  千葉の問いかけに返答したのは生駒だ。口調は依然刺々しいが、声には口調程の威圧感は無い。  どうやら会話をしてくれるらしい。千葉は無視されると思っていただけに少し驚いた。  千葉は気を取り直して「分かんねえよ‥。」と返事する。  「‥とぼけやがって。」  EXILEのボーカルを意識したような剃り込みを入れた坊主頭の生駒は、やはり路上に寝転がって空を見上げたまま続けた。   「狙うモンなんざ、三高の頂点(テッペン)しかねェだろうが。  お前、高校入ってすぐに長瀬のグループを潰しただろ。  当時は二年。今は三年生の長瀬学(ナガセ=マナブ)だ。」  覚えている。一つ先輩にあたる長瀬先輩だ。
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