第0章 ある少年の日常

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 だが、なんだか生駒の物言いは千葉の記憶より物々しい。  "潰した"なんて言うと、道場破りに行ったみたいだ。  だが、実際は集団でカツアゲしていた長瀬先輩らから被害者を助け出すために倒したのだ。決して積極的に長瀬先輩と喧嘩したワケじゃない。  千葉は間違いを正そうかとも思ったが、今は彼らの話を聞くのが先だと思い反論を飲み込んだ。  「覚えてる。覚えてるさ。長瀬先輩ね。」  「長瀬は相当な有名人なんだよ。噂じゃ一年の時に当時の三高の頭を倒したんだと。とにかく、上級生ですら恐れて道を開けるような奴が長瀬だ。  三高の頭を倒した時点で、長瀬は確かに三高の頂点(テッペン)に立った。」  千葉は、なんだか朧気に話が見えてきたなぁーと思った。  「そいつをーー‥、正確にはそいつ"ら"を倒しやがったのがテメエだ。」  千葉は、流石に馬鹿馬鹿しく思えてきた。  「テメエが長瀬のグループを1人で潰したことは広く公になっていないが、噂はアッという間に広がったんだよ。」  「ーーーーーーーー‥。」  「つまり、今俺達が千葉潤を倒せば頂点に近付けるッてワケだ。」  千葉は三度(ミタビ)深く深く大袈裟な溜め息をついた。  要領を得ない生駒の話を要約すると、『頂点の長瀬を倒した千葉を倒せば、最終的に俺達が頂点じゃん!』とまぁこんな感じか。  さらに、いつから意識があったのか話に加わった足立の話によると千葉は現三年生の"やんちゃ坊主"にも狙われているのだとか‥。  「まさか知らない間に俺がヤンキーの頂点(トップ)になってるなんてなぁー‥」  千葉の呟きは桜舞う春の青空に吸い込まれていったーー。
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