第1章 ある二人の一歩

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 二人を知る人間からすれば、千葉を見れば横には必ず佐久間がいる、二人で一人(ワンセット)なのだ。  しかし、千葉からすれば自分は別に佐久間の後を追っていない。わざわざベッタリ一緒にいようとも思っていない。  多分、佐久間が千葉の後をついて回っているのだ。  千葉は、それに対して嫌だとは感じていない。  むしろ、自分の後ろを一生懸命ついて来ようとする姿には、子犬に懐かれたような嬉しさを覚えているくらいだ。  でも、嬉しさばかりではない。  千葉は彼女を心配していた。  佐久間は、それこそ本当にいつだって千葉の姿を探しているのだ。  "遅刻なんて今更"と言いながらも、教室に入ってきた千葉を見つけた時の彼女の顔は嬉しさと"安堵"に満ちていた。  千葉は、佐久間は自分に依存し過ぎていると思うのだ。  これは、過大評価(ウヌボレ)とも過小評価(ケンソン)とも違う。客観的に考えた結果だ。  だからどうしても、佐久間には女友達がちゃんといるのか?と心配になってしまうのだ。  きっと、佐久間は友達が多いタイプの人間ではない。  話を聞けば、実家はずーっと遠くにあるらしく、一年生の初めは知り合いのいない彼女は独りぼっちだったくらいだ。  佐久間が千葉に異常に懐いているのは、寂しさの反動なのかもしれない。  千葉もそれくらいは理解していたし、だからというワケでもないが佐久間の友情も受け止めている。  しかし、恐らく千葉は佐久間の思いの強さを完全には理解出来ていない。理解出来ていないことにも気付いていない。
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