第1章 ある二人の一歩

5/29
前へ
/41ページ
次へ
 授業終了まで十分。  そんなタイミングに教壇側のドアからノックする音がした。 千葉は「ん?」と視線を其方に向ける。  ガラッとドアをスライドさせて女の子が入室してきた。  古いドアの開閉音にクラス中の注目が集まり、次いで現れた見知らぬ女子に移動した。  皆の頭上には"?(ハテナ)"が浮かんでいる。  先生だけは分かっているようで「間に合ったね」と話し掛けていた。 そして、  「転校生を紹介する。」  先生の一言でクラスメート達は一気に状況が理解出来たらしく、転校生であるという美少女を前に盛り上がった。  「うおおぉぉおお!!まさかのステキイベントだあ!!」  「マジですか、先生!!マジでごさいまするかぁああ!」  「女神が!二年A組に女神が降臨なされたぞ!」  「俺の嫁!!」  「バカか!俺の嫁だ!!」  お分かり頂けるとは思うが、歓声は全て男子(バカ)たちのものだ。  女子生徒は冷ややかな目をしていた。  (こえ~ー‥)と千葉は思うが、声には出さなかった。  自分もわざわざ歓声を上げて女子生徒に引かれたくはない。   (つーか、お前ら。出逢い方としては転校生もクラスメートの女子もさして変わらねえだろうが。‥これ、女子に失礼じゃね?)  でも、千葉は思う。    転校生の女の子は確かに美少女だ。    何だかんだ言ったところで彼も男の子だった。  無意識の内にカワイイ転校生に見惚れていた。  佐久間はというと、転校生よりも千葉のリアクションを見ていた。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加