第0章 ある少年の日常

2/12
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/41ページ
 ジリジリジリジリーー。  ある学生寮の一室、アナログ時計が少年の眠る枕元でけたたましく朝を伝えていた。  「んーーーーーー‥。ッな!!」  今まで見ていた夢が吹き飛ぶくらいの五月蝿い騒音でやむなく起床した少年は、その時計針‥、主に長針の指す英数字を確認した所で驚愕した。  「マジかよ!?コレ完全に遅刻コースだろうが!!」  短針はⅧ(ハチ)を、長針はⅡ(ニ)を指している。  彼が目覚まし(アラーム)をかけたのは八時〇〇分。普段から朝はバタバタしている彼にとって、一○分寝坊することはまさに致命傷なのだ。  愕然とした。絶望した。最終的には自分の寝起きの悪さに怒りを覚え、矛先をアナログ時計に向けた。  普段、少年は自分の怒りを物にぶつけたりはしない。今日は普段と少し違うのだ。  現在、彼のよく片付けられたシンプルな部屋のカレンダーは、四月のページが一番面(ウエ)にきている。桜舞う暖かい出逢いの季節だ。  そして、始業式のある季節だ。  「チックショウ!」  部屋に木霊していた"ジリジリジリジリ"は、"ガシャン!"という破壊音をもって永久に停止した。  少年は寝起きが悪い。  だが、あまりに悪い新学期スタートの予感に眠気なんかとうの昔に吹き飛んでいた。  今は時計(ヤクタタズ)の残骸(シガイ)を処理している時間はない。一分一秒が惜しいのだ。  今から急げば開始時間に間に合うだろうか?  (いや、やるしかないだろ!)  少年は大急ぎで支度を済ませて家を飛び出した。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!