第0章 ある少年の日常

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 そして、もう一つ。千葉潤には自信の理由がある。  それは『心眼(サードアイ)』と呼ばれる能力だ。  その正体は凄まじい動体視力と反応速度だと千葉は思っている。  "思っている"というのは、千葉は別に『心眼』という特殊能力者ではないからだ。  魔法名でも何でもない。  ただ彼と三人組の喧嘩を見ていた人達が、千葉の完璧な回避(防御ではなく)、的確な反撃を見てソレを言い始めただけなのだ。  だが、案外千葉は『心眼』という通名を気に入っていて、自身もソレを使っている。    『心眼(サードアイ)』は、喧嘩やスポーツに置いて完全無欠な能力だと千葉は思っている。  だから、こんな"やんちゃ坊主"に負けるなんて微塵も思わない。    後は時間の問題だ。‥というより、千葉は最初からそれしか考えていなかったが。  千葉は無理だと分かりつつ遅刻するぞと言ってみる。  「お前らも飽きないよなぁ、本当に‥。でさ、俺としては学校に行きたいんだよね、今すぐに。お前らも早く行かねーと遅刻するぞ?」  別に期待してたワケじゃないが、千葉には返ってくる答えは大体分かっていた。  「何だこの野郎。俺達なんざ眼中に無ェってか!?いつまでも自分の方が強いと思ってんじゃねーぞ!!」  また、千葉はこの次の手も読めていた。  足立は朗らかな春には似合わない獣じみた叫び声と共に一歩踏み込み、その鍛えられた太い右腕を思い切り振り抜いてきた。
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