第0章 ある少年の日常

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 足立のストレートを合図に生駒と上野は蹴りの動作に入った。  千葉は、その"第三の眼"と呼ばれる身体能力を使って、正面の足立のストレート、目の端に見える生駒と上野のハイキックを見極める。  三人の攻撃が千葉に当たるまでには数秒とかからないが、千葉にはハッキリと見えているのだ。  その軌道、その速度が確かに視認出来るというのは、千葉の絶対的有利を作り出す。  如何に有利かを簡単に説明するなら、千葉の『心眼(サードアイ)』は"後出しジャンケン"が分かりやすいだろう。  地域によって掛け声は異なるが、普通ジャンケンは「最初はグー。ジャンケン"ポン"」でグー・チョキ・パーの何れかを同じタイミングで出す。  勝つか負かるかは、"運"に寄るところが大きい。  ジャンケンのルールとしてはそうなのだ。  だが、実際のジャンケンは、手を出すのに僅かな時間差(タイムラグ)が生じる。  また、お互いの手を確認し合う前に、出すまでの動きの間に手が見えてしまう。  千葉の『心眼』(アトダシ)は、それを見て、手を勝つ手に変更する能力だ。  必勝。運に寄らない常勝。  手を出し終えるまでに視認し、勝つ手を考え、出す。  千葉の勝率の理由はそれだけのことなのだ。  喧嘩もジャンケンと変わらない。  既に千葉は三人の"手"を確認している。  これは、彼が何を出せば勝てるのか分かっていることに他ならない。
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