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「僕の見解だと、どうもそう簡単ではないようなんだ」
「どういうことだ」
「うん、……実はね」
パチリと、写宮の薄いまぶたが瞬いた。
「どうも彼にはアリバイがあるらしい」
「えっ」
黙って話を見守っていた知香は、思いがけない言葉に、跳ねるように顔を上げた。
「写宮くん、アリバイって?」
「なんだ、気付いてなかったの桜井」
きょとんと、写宮は知香を見やる。
「気付くってなにを……」
「名倉さんが連れていかれた少し後、警官が僕らに話を聞きに来たじゃない」
「うん、そうね」
そこで写宮はくるりと顔の向きを変え、「来たんだよ」と柳に状況説明をした。
「ああ」
柳が頷き、再び写宮の視線が知香に戻る。
「あの時、警官は僕たちに何を聞いた?」
「何を──」
記憶をたどり、問われた質問の内容を思い出してみる。
「『11時半頃、名倉さんに会いましたか』って」
「そう」
人差し指を立て、彼は頷く。目線で理解を求められた柳も、しっかりと頷いて答えた。
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