195人が本棚に入れています
本棚に追加
それから一年。
僕は小学5年生になっていた。
必死に頑張っていたお陰で、ずっと学年や塾で一番をキープしている。
既に学力は高校生レベルにまで達し、周りは僕を天才児と持て囃した。
「大悟、やっぱりアナタは天才だったのね!!流石は私の子だわ!!」
母が壊れそうなくらい抱き締めてくれる。
嬉しい筈なのに、僕は違和感を抱いていた。
天才?
違うよ…、お母さん。
僕は天才なんかじゃない…。
やっぱり、僕を見てくれないんだね…。
天才じゃない…!!
努力しているんだ…!!
血の滲む様な…。
寝る間も惜しんだ努力の結晶なのに…。
でも、そんな事は言えない。
厳しかった母が、せっかく優しくしてくれる。
ぬるま湯の様な居心地の良さに、いつまでも浸っていたい…。
…そんな願いは簡単に砕かれた。
――――
いつもの様に塾へと赴いた僕は、いつもと違う雰囲気を感じた。
(先生どこだろ…?)
僕だけに個人で教えてくれる先生が、いつも居る場所に居なかった。
仕方なく教室に向かい、授業の準備をしていると扉が開いた。
「あぁ、大島くん。悪いんだけど、少しの間だけ待っててくれるかな?」
返事も待たずに先生は出て行ってしまう。
気になった僕は後をついて行った。
「…お母さん。これは凄い事ですよ!!この子のIQは既に東大生並みです!!伸ばし方次第で、すぐに学力も同等まで上がります!!」
先生が褒め称えてるのは、僕よりも少し小さい男の子だった。
「どうでしょう?是非、入塾させてみませんか?半年で成果が出せます!!」
その言葉に、少年の母親は頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!