はじまり

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 覚えているのは。  新緑の若葉。木洩れ日の下。  涼しい風が吹く中で彼は僕に言った。 「大きくなったらケッコンしようね」 と。  当時の僕にとって、「ケッコン」という言葉は、「大好きなヒトとずっと一緒にいられる」魔法の言葉だった。  同性では結婚できないなんて知らなくて、純粋に嬉しかった。  僕の家ではまさにそのケッコンが終わろうとしていたから、なおさら彼の申し出が暖かかった。 「うん」  そう答えた僕は間違いなく世界で一番幸せな人間だった。  その直後にいらない邪魔さえ入らなければ、ずっと幸せな人間でいられたはずだ。
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