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俺が頭を下げて謝罪すると、店の人は笑顔になって誘ってくる。
『お客様にそこまで気を使わせてしまって、こちらこそ申し訳ありません、しかし当店は内装はともかく、特別なマナーなど無い、普通の食堂でございますから、お気軽に誰でも食事ができますのでご安心下さい、…それに今はお昼時ですから、ホテルの外で食事されるにしても、順番待ちで待たされるかもしれませんよ』
なるほど、店の人の言うとおり昼時になれば、食堂は混雑するだろう、特に社会人ならば、会社の休み時間が限られているし、次々にやってきて、中には待たされる人も居るだろう。
それに、俺に声をかけた店の人とて仕事中なのだ、俺がダラダラと悩んでいては、客一人に対応が長すぎると、後で上司か誰かに咎められるかもしれない、せっかく俺の為に顔を出してくれたのだ、ここは即断するべきだろう。
『なるほど、確かにそうですね…じゃあ、こちらでお世話になります』
お客の立場なのに、やたら低姿勢に思われるだろうが、俺は金を出す客だから強い立場なんだと、胡座をかくのは大嫌いなのだ、店の人も人間で機械ではない、礼儀正しい人には、こちらも至らないものの出来る限りで礼儀をもって接するのが、道理である筈…俺はそう言う考え方の持ち主だ。
『ありがとうございます、ではこちらへ』
店員さんは、ドアを開いて店内に入りやすいようにしてくれる、俺は店員さんに一礼しながら、そのドアをくぐり抜け、食堂へと入った。
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