正義の童帝王

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「ひめ、媛、ひめぇ……」   東京。   アパート。   昼のこと。   一人の男が自室で、アニメ《しゅうかつっ!》を見ていた。   彼の名は『仙童 帝(せんどう みかど)』。   なかなかに端麗な容姿ではあるが、彼はアニメマニアなのだ。   そして、いまの萌対象は《しゅうかつっ!》というアニメのキャラクター、七夕 媛(たなばた ひめ)である。   「ハックショォイ!じゅる」   なんとまあくしゃみをしたら鼻水がでてしまった。   「ティッシュ……。やべティッシュなくなったな……」   帝はしぶしぶ押し入れに向かい開けると、予備のティッシュも切れていた。   「……シマスー行くか……」   シマスーとは、帝行きつけのスーパー。シマムラスーパーのことである。   帝の住むアパートから自転車で4分。   非常に近く、広く、品揃えがいいスーパーなのである。   帝はパソコンの電源を落とし、いそいそと準備をし、家を出た。       「お、このティッシュ安いな」   シマスーに着いた帝は、一番安い箱ティッシュのセットを抱えレジに向かった。   「180円です」   レジ係の人に言われ、帝は200円、100円玉を2枚財布から取り出し、小銭置きへ置いた。   「20円のお返しです」   レジ係の人は、小銭置きの100円玉2枚を取り、10円玉2枚の下にレシートを置いて、帝の手に触れないように置いた。   ちょっとムカッとしちゃうのよ。 「ありがとうございましたー」   店員の、機械のような見送りに帝は少し腹を立てたが、今はそんなことよりマスターベーションである。   しかし、何か回りの様子がおかしい。   どうやら何物からか逃げ回っているようだ。   「や、やべえぞ……俺も逃げよ……」   「ちょっとそこのティッシュ!」   「は、はいッ!?……え?」   帝は思わず返事をしてしまった。   だってティッシュを持っているんだもの。   「あ、あの……」   そこにいたのは、現実ではありえないほど赤髪で、ツンとしつつかわいらしい顔をして、中々なプロポーション。そして、アニメの組織の制服のような、ピンクと白の生地に、黒いパネルパターンの線が書かれた服を着ている、帝好みの18ぐらいの少女だった。
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