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チリンチリン…
店主『おおきに~。』
二人は茶屋を出た。
随分と日は傾いて、焼ける様な熱さは薄れたものの、無風の町中に立つとさすがにうだってくる。
沖田『ふぅ、夏も終わりとはいえ、まだまだ暑いですねぇ。』
合わせの襟をパタパタと扇ぎながら、凰葉に尋ねた。
沖田『これからどうするんです?』
凰葉『…はてなぁ。分からん。』
沖田『……今迄どうやって暮らしてたんです??』
凰葉『…はてなぁ、忘れた。』
沖田は慌てて
沖田『も、もしかして、住む家も無いんですか!?何時もずっとあの石段に座って過ごしてたと!?』
その言葉に、凰葉の足がふと止まり、
凰葉『何時も…?』
と不機嫌そうに言い返すと、
沖田『あわわ…いえいえ此方の話しで…。』
と、思わず言葉を濁した。
凰葉『まぁ何とかなるやろ。』
意外に楽天的な凰葉の考えに、沖田はなにか閃いた。
沖田『あ!ありますよ、良い食い扶持が!貴方の腕を存分に使えて、更に衣食住まで揃っているときてる!』
凰葉『そんなん、あるんか?』
と訊いた凰葉に沖田はひとつ、ふふっと笑顔を返した。
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