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《文久三年八月》
先の政変により、会津候より正式な隊名を賜った壬生浪士組。
その名は
『新選組』
であった。そして、この物語は、八月十八日の政変の直後からの話である。
―壬生・新選組屯所
バタバタと煩く足音が屯所内に響く。
『な、何事?!』
ガラリと障子を開けて顔を覗かせた隊士の鼻先を、男が勢いよく駆け抜けて行った。
平隊士『ちょ…お待ちくださいよ!勝手にお出掛けになられては困りますよ!!沖田隊長~』
と叫ぶと、彼は走りながら振り返り、
沖田『あはは、大丈夫ですよ!この前の政変ってヤツで過激な志士達は皆京から離れちゃったじゃありませんか!』
平隊士『し、しかし…ッ』
沖田『これ以上菓子禁止なんて耐えられませんので、少し出掛けて来ますよ!』
そう言って手を振り、南風の様に門戸をくぐって出て行ってしまった。
平隊士はグッタリと肩を落として、『も~困るんだよなぁ』と漏らした。
『へっ…アイツを閉じ込めとくなんてのは、まぁ無理な話しさ。放っておきゃいいのさ。』
と一人の男が笑った。
平隊士『…永倉隊長、でも差し料も無く出て行きましたけど…。』
永倉『……。』
蒸し暑い京の夏である。
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