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女の背中が紅く染められてゆく。
『ぎゃあ!バ、怪物かコイツ!?』と叫びながら、残りの浪人等は四方八方に散って行った。
沖田『………!!!』
女が一歩、歩を進めると…
沖田と目が合った。
女はぶらぶらと左手に持っていた刀を、カツン…カツン…と地面を叩き鳴らしながら、ゆらりと沖田に近付いて行く。
沖田『!』
沖田はばらばらと、持っていた袋を全て捨てた。
あぁ、死ぬかもしれない。
沖田は率直にそう感じた。
別に剣士として負けたと思ったのではない。死の瞬間とは、様々な不運を連れて、こうもあっさり形成されるもんなんだな、と思ったのだ。
女があと一歩で沖田の目の前に辿りつく。沖田は両手にぎゅっと力を込めた。冷たい汗が背をなぞる…不快この上無い。
が、その瞬間、ガラン!と音を立てて刀が転がった。
『ハッ!!』
沖田は、その音に我を取り戻した。
女はすれ違いざまに、ふっ…と笑みを浮かべて、そのまま歩き去ってしまった。
『……なんだ、ありぁあ??』
沖田は怪訝そうに、だが心から胸を撫で下ろした…。
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