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《京都・市中》
朝方の町には、薄霧が架っていた。ムシムシとした暑い朝だ。
御用改めのため、沖田は隊士数名と市中を歩いていた。
すると、まだ閉まっている店舗脇の石段に座っている人物に気付いた。
沖田『おや?あれは…』
見覚えがある。そして記憶は直ぐに鮮明に蘇った。
(あ!!昨日のあの女性だ!)
沖田は声を掛けようとした。がしかし、
『隊長!どちらに行かれるのです?御用のある場所はこちらですよ!?』
と隊士が沖田の隊服の裾を掴んで引き止めた。
沖田『え!?あぁ、そうでしたね。すみません。』
…任務の途中だし、今は無理そうかな。仕方無いか。
後ろ髪を引かれつつも、沖田達は現場へと急いだ。
そして、任務が終わったのはドップリ日が暮れた夜遅くだった。
沖田は朝歩いた道を戻って来た。流石にもう居ないか、となかば諦めていたのだが、朝と同じ場所で再び女の姿を確認したのだ。
(うわっ!まだ居たのか!)と内心思った沖田が其処に近付こうとしたら、またもや…
隊士『沖田隊長!早く帰って報告を済ませないとまた怒られてしまいますよ?!』
沖田『ええぇ~!?』
強引に引っ張られて屯所に戻されてしまった。
結局この日の再会は叶わず終いになった。
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