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(居た!!)
心の中でそう叫んだ。
その女は日光を嫌う様に木陰の奥深くの石段に腰を掛け、何をするでもなく、何を見るでもなく、ただヒッソリと黙って座っていた。
砂利を踏んで沖田が近付いた。
沖田『こんな所で偶然ですね?私を覚えてますか!?』
沖田は明るく話し掛けた。相手の抜刀範囲内に踏み入れない様に、絶妙な間合いを計りつつ、だ。
妙な女『………』
…反応がないな、と沖田は思った。女は瞬きひとつ、おっくうだ…と言わんばかりの表情である。
沖田『…あれれ?忘れちゃいました?まぁ仕様が無いですよね、一昨日の事ですし。あははは。』
腕を組み、沖田は考えてみた。この間の躰の芯が凍りつく様な殺気が、今日のこの女からは欠片も感じないからだ。
沖田が頭を悩ませて居ると、女の口が微かに動いた。
沖田『ん?』
妙な女『……っ…』
沖田『え?え?なんですか!?』
妙な女『…お…お腹、…すい…た』
バタン
そう言うと、女は倒れ込んだ。
沖田『ええぇ!??』
…辺りには沖田の叫んび声と妙な女の腹の虫の音が響き渡った…。
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