一人

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ガチャッ 「よっ♪起きてるか?」 「また来たのか……。どうした。」 「いや?ただ、遊びに来ただけ♪」 「そうか……。」 私は、ただの人形……。 遊ばれるためだけに造られた。 私を造ったのは、今、私の目の前にいる男だ。 名前は知らない。ただ人形を造る仕事をしているとしか知らない。 「なあ……。そっち行っていい?」 「フッ……どうぞ?」 スタスタスタッ ドサッ 「今日もまたなんかあったのか?」 「いや……。淋しくなったから来た……。」 「そうか……。」 「また、考えてた……。」 「お前の大切な人の事か?」 「うん……。」 「また話していい?」 「いいよ。おいで?」 ギュッ この男には、大切な人がいる。いや……大切な人形……だな。 その人形は、コイツと愛し合う度に男の記憶を消す。 そういうプログラムなのだ。 でも男はしっかりと覚えている。 そしてまた出会い、お互いが好きになると記憶が消えるのを知りながら……愛し合う……。 「最後ね……。記憶が消える前、必ずその娘はありがとうって言って泣くんだ……。 そして次に会ったときは、俺を忘れてる。 でも、俺は好きだから……。 また新しい思い出を作るんだ……。」
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