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酷い耳鳴りがした。
幼い頃からイオだけに聞こえる音が、今日は何故か痛い。素っ気なくも優しかったいつもの音色が憤るように鳴る。
『視よ、空を、血のように赫く染まった空を。我らは怒っておる』
見上げた黄昏時の空に、躯が凍てついたように冷たく成る。
『視よ、躯を、震える胸元に光し我等の欠片。我等が目醒める時。
浅ましき愚者共を根絶やしにせし日まで、決して我等を忘れる事は赦さぬ。
それがアレスの生き続ける意味なのだから』
音が残していった余韻は、確かに弱気なイオの何かを奮い立たせた。
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