はじまりの村。

6/9
前へ
/9ページ
次へ
「行かなきゃ」 落としてしまった茶色い紙袋を無心で拾った。無心で石畳を駆けた。いつもなら気鬱な帰り道の景色が、初めて目まぐるしく流れる。 どくどく、痛いくらいに脈打つ鼓動。 そして神秘的な胸元の蒼い魔石が、突き刺すような熱さをイオの全身へと向けている。 そして、ぴたり。止まった。 荒い息遣い。耳が痛いほど逸る音に、少女は不思議そうに小首を傾げる。 何故自分は焦燥に駆られているのか。何処に行かなければならないというのか。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加